山頭火は昭和四年に臼杵へ来ている。
十二月、九六位山から臼杵石仏へ向かった。しぐれの時期に濡れながら山路を歩きに歩いて深田についた山頭火は、その後友人に当てた手紙にこう記している。「秋風の送られて時雨に迎えられてここまで来ましたが、毎日の雨で詮方なしに『雨日聴雨受用不尽』などと呟いております。仏陀の慈悲蔭いや深くして意外な供養を受けました」と。また、「濡れ仏となって臼杵の石仏を拝観しました。或は観賞し、礼拝しているうちに、すっかりうれしくなって、抱きつきたいやうな気分になりました。そして豆腐で一杯やりました、こんなに親しみのある仏様、こんなにうまい酒がメッタにあるものではありません」と記し「しぐるるや石を刻んで仏となす」と詠っている。
山頭火は臼杵が気に入ったのか、八日間に及ぶ異例の長滞在であった。
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